これって虐待なの?
Youtubeで親の介護をしている様子を撮影する動画が増えています。
その中でこれは虐待ではないかと視聴者の方が民生委員に通報をし、役所の人から指導を受けたというニュースがありました。
虐待と聞くと身体的虐待をイメージしがちですが、本人の意志に反して一生懸命お世話している介護を虐待だと言われると落ち込んでしまいますね。
しかし虐待には高齢者のお金を勝手に使ったり毎日暴言を投げかけるという行為も虐待のひとつです。
心身にダメージを与え人としての尊厳を傷つける行為はすべて虐待と言えるのかもしれません。
<高齢者虐待の種類とその事例>
5種類の虐待
- 身体的虐待
- 心理的虐待
- 性的虐待
- 経済的虐待
- 放任的虐待
高齢者に「性的虐待」はあり得ない…とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、よくあるケースとしては高齢者本人の目の前で『うちのおばあちゃんはおねしょがひどくて…』と知人に話すことで高齢者に精神的苦痛を与えることもあります。
日常的に続けば立派な「性的虐待」となりえます。
施設も同じで仕事中に本人がいる前でスタッフ同士とそのような話をしていませんか?本人が理解できていないからと思っていても表情を読み取ることは出来ています。
身体的虐待
<事例>娘から母親への虐待
以前からデイサービスの入浴時に施設職員があざを見つけることがありましたが、ご利用者さんはトイレで転倒したと答えていました。
ある日、顔面や肋骨を打撲して救急車で病院へ運ばれました。
その他に両腕、両脛、右目下、両あごの下などにあざが発見されるのですが、娘はいずれも「転倒」と答えます。
ご利用者さんに詳しくお話を聞くと食事を食べきらなければ叩かれ、怒られ、熱いお味噌汁をかけられたこともあったそうです。
被虐待者は「家に帰りたくない、怖い」と訴えています。
暴力行為
・平手打ちをする、殴る、蹴る、やけどなど
外部との接触を意図的に遮断する行為
・身体拘束 部屋から出ていかないように鍵をして閉じ込める
・点滴の針を抜かないようにベッド柵に手を縛り付ける
・おむつを破かないようにロンパース・つなぎの服を着せる
・転落防止のため車いすの安全ベルトなど
・夜間眠らないため薬を過剰に服用させる(精神の抑制薬)
本人にみられる特徴
内出血や骨折、打撲があります。
本人から助けを求める訴えがない場合もある
心理的虐待
〈事例〉息子から母親に対する身体的暴力の怖れ
実際に直接身体的暴力をふるわれることはありませんが、被虐待者に対して暴力をふるうといった内容の警告状を室内に貼ったり、家中の刃物を部屋に隠す、灯油を室内にまく、刃物を振り上げて脅す、ふすまの向こう側から包丁を何度も突き立てるなどの行為があります。
〈事例〉義理の息子から母親への虐待
日頃から関係が悪く、日々ささいなことで怒鳴りつけられるほか被虐待者が話しかけてもわざと無視されることがたびたびであり「すぐに家を出て行け」と言われます。
脅しや侮辱などの言葉や威圧的な態度
・排泄の失敗等を嘲笑したり、それを人前で話すなどにより高齢者に恥をかかせる
・怒鳴る、ののしる、悪口を言う
・侮辱を込めて、子どものように扱う
無視や嫌がらせ等によって精神的に苦痛を与えること
・高齢者が話しかけているのを意図的に無視する等
本人にみられる特徴
周辺症状が増え認知症の症状スピードが速くなる
虐待を受けていることに気づかないことが多い
性的虐待
〈事例〉フィンランドの看護師
2015年フィンランドの裁判所は9月30日、高齢者施設で入居者の高齢女性27人に性的暴行を加えたとして、この施設で働いていた看護師の男(24)に禁錮9年の判決を言い渡した。同国南西部ピルカンマー(Pirkanmaa)の地方裁判所によると被告は2013~14年、勤務先の施設で担当していた74歳~100歳の入居者の女性たちをベッドやトイレで暴行。強姦27件、性行為の強要2件の罪について起訴されていた。
被害に遭ったのは認知症を患っていたり体が不自由だったりする高齢女性たちだった。被害者保護のため事件が起きた高齢者施設の所在地や被害者の氏名は公表されていない。求刑は禁錮12年だったが判決では「当事者以外の目撃者がなく被害女性たちも証言が可能な状態にない」事件において被告が捜査に全面的に協力した点が情状酌量された。
〈事例〉アメリカの看護師
米アリゾナ州フェニックスの介護施設で重度の知的障害があり、ほとんど寝たきりで重い介護を必要とする女性の入所者(29)が昨年12月、赤ちゃんを出産し全米に衝撃が走った。女性をレイプしたとして看護師の男が逮捕された。
2019年1月22日容疑者のネイサン・サザーランド(36)は逮捕された。フェニックスにある長期介護施設「ハシエンダ・ヘルスケア」に入所中の女性に性的暴行を加えた罪で性的暴行1件と成人弱者に対する虐待1件の容疑がかけられている。サザーランドは刑務所に収監された後、裁判所の命令でDNAサンプルを提供。捜査当局が昨年12月29日に生まれた子どものDNAと比較したところ、サザーランドのDNAと一致した。施設の職員は出産直前まで被害者の妊娠に気づかなかったと証言した。
サザーランドは看護師免許を持ち2001年から同施設で働いていた。被害者の部屋に出入りできる立場にあり性的暴行があった時期に被害者の介護を担当していた。サザーランドは勾留後、黙秘権を行使し警察の取り調べに応じていない。赤ん坊は帝王切開手術にて取り出され、現在、赤ん坊は被害者の家族に引き取られ元気にしているという。
性的虐待とは本人との間で合意が形成されていない、あらゆる形態の性的な行為またはその強要を意味する。
・排泄の失敗等に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する
・キス、性器への接触、セックスを強要する等
本人にみられる特徴
認知症の病気や障害のため物事の理解や判断が難しい為、本人は拒否を示せないし助けを求める能力を持ち合わせていない場合が多いです。
経済的虐待
〈事例〉高齢者の独居
一人暮らしであるが別居の姪が時々自宅に来ては家の中を探して物品や金銭を本人の同意なしに持っていく。また本人を無理やり銀行に連れて行きお金を引き出させてそれを持ち帰ってしまうこともあります。
本人の合意なしに財産や金銭を利用したり本人が希望する金銭の使用を理由無く制限すること
・日常生活に必要な金銭を渡さない/使わせない
・本人の自宅等を本人に無断で売却する
・年金や預貯金を本人の意思・利益に反して使用する等
本人にみられる特徴
家族間、兄弟姉妹に多いトラブルです。
ダメなことが分かっていてもお世話になっているからと強く言えない場合が多いようです。
放任的虐待(ネグレクト)
〈事例〉息子から母親への虐待
息子と二人暮らしである母親は認知症を発症しています。居宅内はゴミが散乱し食べ残しの食材が腐ったまま放置され虫がわいている不衛生な状況にあり、本人は腐ったものを口に入れてしまうこともありますが息子は片付けようとしません。
介護支援専門員が訪問介護の利用を勧めるが、息子は「介護にはお金をかけたくない」と拒否しています。ときどき被虐待者を怒鳴りつけることもあるそうです。
介護や生活の世話を放任・放棄
・入浴しておらず体から異臭がする、髪が伸び放題だったり皮膚が汚れている
・水分や食事を十分に与えられていないことで空腹状態が長時間にわたって続いたり脱水症状や栄養失調の状態にある
生活環境や身体・精神的状態を悪化させている
・室内にごみを放置するなど劣悪な住環境の中で生活させる
・場所の認識が出来ないため部屋の各場所に失禁、放尿の跡がある
・高齢者本人が必要とする介護・医療サービスを、相応の理由なく制限したり使わせない/等
・同居人による身体的虐待、心理的虐待等と同様の行為を放置すること
セルフネグレクト
一人暮らしの高齢者の場合、生活能力や意欲が低下することで今までできていたことがテンポよくできなくなってしまいます。
・脱水症状、栄養不良、未治療又は不適切な治療状況、不衛生状況
・不衛生又はきたない住居(例:害虫の出没、トイレの故障、尿のにおい、悪臭等)
・必要な医療補助具の欠如(例:眼鏡、補聴器、義歯等)
・不衛生な住居又は人間として住むに値しない劣悪な住環境、自分で自分のお世話が出来ない
・金銭管理できず、不適切な金銭の蓄え
・うつなどの心の病気
高齢者虐待の種別割合
16,423件の高齢者虐待報告のうち、66,6%が身体的虐待を含むものでした。
次に心理的虐待、ネグレクト(放任的虐待)、経済的虐待、性的虐待と続きます。
身体的虐待は発見されやすいこともあり件数が多く上がっているのですが、その他の虐待では潜在的なものを含めると更に数は増えるのかもしれません。
虐待者の続柄が1位2位と息子・夫で男性が60%以上となります。
これまで仕事人間だった男性が慣れない家事や介護をしなくてはいけません。
介護技術が不慣れで未熟であることから仕事のように自分の思い通りにことが進みませんし、ストレスを大きく感じるからではないでしょうか。
また虐待者との二人暮らしであると虐待が起こる可能性が高くなります。
その理由として家庭外からの身体的・精神的なサポートを得られにくいため介護ストレスが蓄積しやすく高齢者虐待が起こるリスクが高まるのです。
家族介護における悲しい殺害事件
ある老夫婦の奥さんは認知症を患っていました。
旦那さんはとても優しい方でご近所からも献身的に介護をしていると評判は良かったのですが、ある日、旦那さんは奥様を殺害しました。
「奥さんが壊れていくのがそばにいて耐えられない、かわいそうだ。」と思い行動してしまったそうです。
介護殺人の加害者に多いのは献身的に介護を続けた人、外部のサービスを利用するのが苦手な人、介護を仕事のようにとらえる人という傾向があります。
さらに男性は女性よりも他者を頼ることにためらいがちで外部のサービスを利用したくないと考える人が多いそうだ。
今回の事件でも判決は夫が第三者の支援を受けるのが難しかったと指摘しました。
高齢者への虐待についての自覚
自覚がない(54.1%) 自覚がある(24.7%) わからない(20.4%) 無回答(0.8%)
介護者からの虐待についての割合
自覚がある(45.2%) 自覚はない(29.8%) わからない(24.5%) 無回答(0.5%)
なんと約30%の人たちは虐待を受けている自覚がなかったとのことです。
どのような時に虐待が起こりやすいのか?
順位 | 内容 | 割合 |
1 | 排泄 排泄時の付き添いやおむつの交換 | 62.5% |
2 | 入浴 入浴時の付き添いや身体の洗浄 | 58.3% |
3 | 食事 食事の準備や介助 | 49.1% |
4 | 移乗 車椅子からベッド、便器、浴槽、いすへの移乗の際の介助 | 48.3% |
5 | 起居 寝返りやベッド、いすからの立ち上がりの介助 | 47.7% |
6 | 移動 屋内を歩いて移動する際の介助 | 37.8% |
7 | 認知症ケア 認知症の症状への対処 | 28.9% |
8 | 見守り 徘徊の防止や夜間の転倒防止の見守り | 28.2% |
9 | 外出 買い物などの付き添い | 19.4% |
10 | リハビリ訓練 歩行訓練などの付き添い | 16.1% |
一般的に言われるのはトイレやお風呂などの密室な空間で虐待は行われやすいそうです。
一対一になりますので周りからの目が届きにくくなります。
そんな時は我慢の抑制ができず手が出てしまったり思いやりのない言葉が出やすくなります。
また介護者はお世話をしてあげているという、上からの目線になってしまいがちです。
なので介護を拒否された時、怒りやすく暴力や虐待につながりやすくなります。
虐待の原因
では、なぜ虐待をしてしまうのでしょうか?
答えは簡単です。
介護に対して拒否があるからです。だって人間ですもん。
我々は機械ではなく感情を持った生き物です。
気分が悪い日だってありますし、嫌いな人もいます。
そもそもあなたにお世話されたくないと思っているかもしれません。
様々な要因がありますが、もし、あてはまるようであれば改善できるよう努力するしかありません。
虐待をする要因
【介護者や高齢者の性格や人格、人間関係】
・介護者の性格や人格
・高齢者本人と介護者のこれまでの人間関係
・高齢者本人の性格や人格
【介護負担】
・介護者の介護疲れ、慢性的な身体・精神の疲労
・高齢者本人の認知症による言動の混乱
・高齢者本人の身体的自立度の低さ
・高齢者本人の排泄介助の困難さ
【家族・親族との関係】
・配偶者や家族・親族の無関心、相談、助けてくれる人がいない
【経済的要因】
・経済的困窮、介護のために仕事を辞めざるをえない
【職員の知識・技術の問題】
・認知症や身体拘束廃止などの知識や技術が十分でないこと
・必要な研修や、勉強会など知識を増やす機会がないこと
・倫理、法令遵守の必要性の理解が十分でないこと
【施設の体制による問題】
・あるべき高齢者介護の方針がなく、職員が介護の方向性をきめられない
・業務改善の仕組みが整っていない
・業務負担を軽減するための取組が不十分で、適切な介護が提供できないこと
・法令に基づく適切な人員配置・施設整備がなされておらず、職員の負担が大きく適切な介護が提供できない。
介護は家庭内の問題だけど日本社会の問題
要因を分析する際、虐待をする側、虐待を受ける側、それらを取り巻く環境を理解していく中で見つかっていきます。
日本という国は超高齢社会を迎えており高齢化は日本社会の大きな問題として取り扱われています。
しかし介護の問題はどうしても家庭の中で閉じ込めてしまいがちになります。
責任をもって自分が面倒を見なくっちゃという方もいるでしょう。
介護者は頼れる人が少ないわけです。
頼ろうにも誰を頼ればよいのか教えてくれる人もいません。と嘆く人もいます。
現在の日本社会では地域によって対応が異なるかもしれませんが社会福祉協議会や市役所もしくは役場へ相談に行けば話を聞いてもらえます。
ひとりで悩む必要はありません。
同じことで悩んでいる人は大勢います。
冒頭のYoutubeもそうです、毎日の大変な介護の苦労を理解し適切なアドバイスなりをしてあげれるのではないでしょうか?
素直に聞き入れてくれるかは分かりませんが、、、
虐待の考え方
介護の仕事は人と接するサービス業です。
だから人との相性や性格が合わなくて嫌だなぁと思うこともあると思います。
好きな人でも、忙しい時や自分に余裕がない時に話しかけられたら「ちょっと待って」と強い口調で返事してしまうかもしれません。
次は何が適切で何が不適切なのかを考えていきたいと思います。
まず初めに介護の世界に正解や間違いはないという概念を持っていただきたいとおもいます。あるのは適切か不適切です。
その不適切な言葉や行為が積み重なり、虐待、暴力に発展していきます。
繰り返し言いますが初めから虐待が行われるのではなく、適切ではない言動の積み重ねが重大な犯罪を招きます。
適切でない言動の重要性を理解し自分を含め全員が知らぬふりをせず、良くないことはよくないと言える職場づくりをしましょう。
不適切な言葉を使ったなと、自分では気づきにくいものです。
家族が一所懸命に高齢者本人を介護しようとしていても、介護の正しい方法がわからなかったり自身の心身の状況等から介護の方法が不適切だったりするために、結果として虐待の状態を招いてしまっているということもあります。
たとえば高齢者本人の怪我を防止するつもりで身体を椅子やベッド等にひもで固定するなど、過剰に行動を制限することが虐待となることもあるのです。
これは虐待ですか?
・食事は自分で食べることは可能ですが時間がないので食事の介助を行った。
・朝から急ぎの用事あったため寝起きの準備を半強制的に行った。
・老人が職員に話しかけたが業務が忙しく「ちょっと待って」と強い口調で言ってしまった。
短い文章で判断しづらく、様々なご意見があるとは思いますが、自分で思考して意見を持つということがとても重要です。
自分なりの答えを持つようにしましょう。
自分にとって介護とは何なのか?信念をもって介護しているとやりがいや後悔のないお別れをむかえることができます。
自分の介護方法に疑いがある方
自分の介護を振り返ってみましょう。
もし介護技術に自信がなければビデオに撮影したりなど、誰か専門の人に相談しアドバイスを受けてはいかがでしょうか?
恥ずかしいことかもしれませんが誰もが初めは未熟です。
経験をこなすうちにコツをつかみ上達していくのです。
むしろ上手な人に相談するのは合理的であると言えるでしょう。
もし自分が働いている施設で虐待が発生したら
個人の責任追及や倫理観、道徳をしっかり持ってほしいわけではありません。
それよりもチームケアや介護の専門性を重視してほしいです。
患者さんが暴力を受けたと言ってます。
誰が暴力をしたんですか。会社を辞めますか。
ではなく、どうしてそのような出来事が起きてしまったのか。
もしかしたら他の職員も同じことで悩んでいたのかもしれません。
大きな事故が起きる前には、必ず不適切なグレーゾーンがあるはずです。
周りの職員が気づいてあげることが大事だと思います。
職員が一人で悩まずに一人のお年寄りの豊かな暮らしのために、職員が全員でサポート(支援)して欲しいです。
もし施設で虐待を疑ったらカメラが有用かもしれません。
動体検知モードにすると90日可能となりますし、無駄なデータを使用しなくて済みます。
価格:4,380円 |
チームケア、専門性の向上
介護の能力や技術が未熟な人へ批判をするのではなく、同じ現場で働く同僚がケアのやり方や方法に困っているのではないか?という視点を持ち声をかけてみてください。
直接、本人に言えないなら上司に相談するのも良いでしょう。
大きな犯罪になる前にその職員を守るためにも勇気を出して対応してください。
まとめ
虐待の定義が大事なのではなく自分がされたくないという気持ちを忘れないでください。
人間なので必ず感情は持っています。
相手に対して怒ることで、自分は情けないなと感じる必要はありません。
大事なのは感情のコントロールです。(アンガーマネジメント)
そのための自己覚知をしてみてください。
自分の性格を理解する
性格を知ることで、慌てず、落ち着いて対応できる。
短所を理解することで、対策を立てることができる。
長所を理解することで、更に伸ばすことができる。
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