介護の仕事は人を相手にしますので接客サービス業と同じです。
仕事をするにあたってはコミュニケーション能力を必要とします。
以下の3点に注意しながら仕事をしましょう。
- 職員は見られている意識を持つこと (入居者・ご家族様・スタッフ)
- 来館者は職員に大きな期待を抱いている。(スタッフ全員は専門家)
- 自分が思っている以上に期待をされている。(初めから人を疑って、悪いことは考えない)
メラビアンの法則
アメリカUCLA大学の心理学者/アルバート・メラビアンが1971年に提唱した概念です。
人物の第一印象は初めて会った時の3〜5秒で決まり、またその情報のほとんどを非言語から得ているとします。
メラビアンが提唱する概念において、初対面の人物を認識する割合は、
- 「見た目/表情/しぐさ/視線等」の視覚情報が55%
- 「声の質/話す速さ/声の大きさ/口調等」の聴覚情報が38%
- 「言葉そのものの意味/話の内容等。」の言語情報が7% とされています。
別名「7-38-55ルール」とも、言語(Verbal)、聴覚(Vocal)、視覚(Visual)の頭文字をとって「3Vの法則」とも呼ばれています。
Verbal Communication (言語コミュニケーション)
言葉による表現を意味します。人は常に意識をして言葉にするものですが、ノンバーバルな部分は意識せずとも自然と行動に現れてくるものがほとんどです。
Non Verbal Communication (非言語コミュニケーション)
- 身振り、手振り、目の動きや表情など
- ボディタッチのような接触 相手との距離感など空間を意識
- 声の高低や大小、リズムなど
- 眼鏡や衣服など 相手に対する気遣い
アップル創業者であるスティーブ・ジョブズは、ノンバーバルコミュニケーションを緻密に計算し、話の受け手に掛かる心理的影響をうまく利用しプレゼンテーションしていました。
ノンバーバルは心理状況を表しやすい
高齢になるにつれて耳が聞こえにくくなったり、言葉を理解しにくくなります。つまり相手が何を考えているのか分かりにくくなります。この人は敵なのか?味方なのか?自分を助けてくれる人なのか?
その判断をするのが「表情」や「しぐさ」といったNon Verbelの部分です。
恐竜時代からそうだったと思います。怒った表情で危険を、笑った表情で楽しさや安全を示していたと思います。表情を読み取る能力は生存能力につながります。だから、年をとってもこの表情を読み取る能力は残されているでしょう。
接遇マナー・コミュニケーション能力を高めるための準備
1 身だしなみを整えよう
身だしなみといっても、高級な服や装飾品は不要です。何より清潔感を大切にしましょう。
だらしない、あるいは奇抜な印象を相手に与え、その後なかなかそのイメージを払拭できなくなるリスクを冒すより、初対面では誰からも好まれる身だしなみを心がけましょう。
2 笑顔を意識しよう
笑顔は相手に安心感を与えます。さらに、人には「返報性の原理」というものがあり、あなたが笑顔を向けると、相手も無意識に笑顔を返そうとしてくれます。
笑顔は相手の気分を自然と明るくさせます!
実は、気分は表情に影響されることが脳科学の分野で証明されています。(これを「表情フィードバック仮説」といいます。)つまり、悲しくなくても悲しい顔をすると悲しい気分になるし、つまらなくても笑うと楽しい気分になります。ある研究では、人と一緒にいるときは、一人でいるときの30倍も笑うという調査結果もあります。
3 姿勢や態度に気をつけよう
4 相手の目を見よう
視線を合わせるということは、存在を認めることです。施設にお客さまが来たら、面倒臭い、よし、関わらないでおこう、逃げよう。と思うのではなく、積極的に「こんにちは」と視線を合わせて、挨拶をしてください。その時には必ず、笑顔を忘れずにね。
5 リアクションをしよう
6 相手の動作をまねしよう
7 声のトーンに気を配ろう
8 言葉遣いに注意しよう
9 相手の名前を呼ぼう
10 話の内容も大切に
11 自己紹介は準備が大事
12 相手の話を聞き出そう
仕事ができる上司は目が肥えている
【「見る」ことが重要な理由】 観察をする
①理解度を把握する ⇒ 相手が説明を理解しているかを把握
②納得度を知る ⇒ 相手が今の説明で納得できているかを知る
③満足度を確認する ⇒ 相手が今の説明で満足したかどうかを確認、把握する
笑顔の作り方と笑うことのメリット
笑顔を作るには口角を上げたりと、顔の表情筋を動かす必要があります。あなたは笑顔に必要な筋肉を持っていますか?自信がない人は意識して笑顔を作ることから始めてみませんか?
そもそも顔には40種類以上の表情筋があり、それらをあまり動かさなければ、肌の弾力やハリがなくなるだけでなく、たるみやシワが増えてしまう原因になります。
表情筋を動かすことで、顔の血液やリンパの流れがよくなり、肌細胞の活性化や小顔効果もあります。
運動で適度に身体の筋肉を動かすことは美容と健康に良いように、笑顔によって表情筋を動かすことも、同じことが言えるのです。
よく笑う人はとても魅力的に感じます。ムスっとした表情だと、顔の造りは整っていても、「美人」だとは感じにくいはずです。
常に笑顔でいる人は内面的に心が優しい人がほとんどですので、相手から「もっと一緒にいたい」と好意を持たれやすくなります。
また笑うことによって、がん細胞やウィルスなどの病気のもとを攻撃する、NK細胞(ナチュラル・キラー細胞)が活発化し、免疫力を上げることが様々な研究によって解明されています。
実際に練習してみましょう
まずは歯を見せよう!!
自然な笑顔のためには歯が見える必要があります。鏡の前に立って、にっと笑ってみましょう。
このとき上の歯が 6本以上見えていればOK です、8本以上が理想 ですが、最低でも6本は意識しましょう。
次に「ウ」と声に出しながら思いきり唇をすぼめて前に出します。
そして「キ」と言いながら口角を上げて笑顔を作ります。
「ウ・キ・ウ・キ・・・・」と約1分間くり返します。
リスさんトレーニングのやり方
1.口の中に空気をためて、唇を閉じます。
2.右頬に空気を集めて膨らませて、5秒間キープします。
3.同様に左頬に空気を集めて、5秒間キープします。
4.上側に空気を集めて鼻の下を膨らませて、5秒間キープします。
5.下側に空気を集めて、5秒間キープします。
6.2~5の動作を3回繰り返します。
役者になって演じてみましょう
笑顔の表情だけを作る練習をしていると不自然になりがちです。
自分のイメージする笑顔を3段階に合わせて声に出してみましょう。
例えば漫画の悪役などは「フフフ」「ハハハ」「ハーッハッハ!」と3段階の笑い方を持っています。
実際の生活で3種類も笑顔を作れるようになれば、ほとんどの状況に対応できると思います。しかし3種類の笑顔を作ろうとした時に、間違いなく表情だけはバリエーションが足りませんので各自で考えてください。
おすすめの笑顔トレーニング方法
表情は、トレーニングすればするほど輝きだします。魅力が出てきます。
さわやかな笑顔は誰に対しても好感を与えるので、日頃から素敵な笑顔を練習したり、表情筋を鍛えるトレーニングをしましょう。そしてせっかく素敵な笑顔を手に入れたら、それを積極的に活用する機会を作りましょう。
より短い時間で自然に笑うためには、「写真や画像」がオススメです。
自分の子供の写真、旅行などの思い出の写真、動物の写真、ネットから探した面白い写真など、あなたが心の底から自然に笑顔になれるものなら何でも構いません。
日常でよく目にする場所に飾ってみてください。私の家は玄関に飾ってあります。
傾聴、共感、受容 信頼関係(ラポール)を作るための方法・手段
『傾聴』の姿勢
傾聴は、単なる話の聞き方ではなく、相手の世界を尊重し、共感し、大切な人だと思って接していく話の聴き方であり、人と向き合う基本的な姿勢そのものです。
認知症の病気が進行すると「言葉」は「記号」にすぎず中身がなくなってしまいます。話を聞いているように見えていても言葉を理解しているわけではなく、隣にいて愛想をふりまくだけになります。しかし自分の話を「聞いてくれる人」「聞いてくれない人」の理解はできるようです。つまり、敵・味方の区別はできるということです。
「聴く」ことが重要
「自分の話を聴いてくれている」 という安心感や信頼感を獲得し、心を開いてくれるようになります。
入居者の気持ちを理解するように努めるのも大切です。以下の把握が理解につながります。
①症状や経過、その発生理由を入居者がどう「解釈」しているか
②介助者に何を「期待」しているか
③現状に対してどんな「感情」を抱いたか
④疾患によって生活にどのような「影響」が出たか
効果的なのはリフレージングとミラーリング
私たちが人を相手にしている以上、全ての人に同じ形の対応(接遇)をしていては、うまくいかないことがあっても当然なのです。
ご高齢の方などは、話の要旨が理解できなくなることがあります。
これが「何を言ってるのか分からん」の状態ですが、このような場合、「敬語で話す」よりもっと大切なことがあります。
それは、「相手が理解しやすい」、「心地よく感じる言葉選び」です。丁寧な言葉でなくとも、相手が気持ち良いと感じる言葉を使ってみましょう。
すなわち、相手と同じような話し言葉を使って会話するのです。簡単に言ってしまえば、相手の話し方を真似(リフレージング)することで相手は「自分のことを理解してくれるようだ」「話しやすい人だ」と無意識のうちに安心を感じ、話を続けることができる、というわけです。
また、相手に同調しながら鏡のように同じ身振り手振りをしてみてください。(ミラーリング)同調効果が安心感を与え居心地の良い空間を演出することができます。
共感
同情は、良くない状況(好ましくない状況)にある他者に対して、自分自身がその他者のことを気に病み、その他者の言動を自分のもののように感じることをいいます。
英語で共感は「empathy」、同情は「sympathy」と表記され別の言葉です。「empathy」は、元々ドイツ語の「einfulung」(感情移入)という言葉から作られました。ですから、英語では感情移入も共感も「empathy」となります。
このような言葉の成り立ちからも考えられるように同情の場合、主体は自分自身であるのに対し、共感の場合の主体は相手側にあります。
共感は、「私」と対象の間に優劣の関係はなく、相手の立場・目線から物事を見るように意識し、「私」の感情ではなく、対象の感情などに積極的関心を持とうとするものです。
入居者様がスタッフに話すとき「あのスタッフは私の話をわかってくれていない」と、もどかしい思いをすることがあります。
症状や痛みはともかく、疾患や治療の不安や恐怖を相手に伝えるのは難しいことです。
「伝わらない」と感じてしまうと不信感が生まれ、信頼関係が築けないばかりか、怒りを感じてしまうこともあります。
効果的なのは、入居者様が会話に使った言葉をそのまま返してあげること。
患者さんの言葉に「~と感じる」「~のように聞こえる」などがあれば、同じように返してあげましょう。
語尾を返すことで、患者さんは看護師さんが世界観を共有していると感じ関係性が深まります。
「伝える」と「伝わった」
ただ気持ちを伝えるだけでは不足となります。重要なのは「正確に伝わったのか」の確認です。
コミュニケーションで多いトラブルですが、情報を共有するには、伝えたという事実ではなく伝わったという実感が必要なのです。
新規の入居者様にまず初めに行わなければならないことは、施設が「安心・安全」であるということをメッセージすることだと考えます。そのメッセージは言葉だけではありません。
もし、対応するスタッフが無表情だとしたら、 相手の目を見て話していないとしたら、「おはようございます」「こんにちは」という言葉が暗かったとしたら、 患者様やご家族は不安を募らせることになります。
受容、相手の言い分を否定しない
受容とは心理カウンセラーが使う聴き方・関わり方で、相手の存在そのものを受け止める事です。ポイントは決して相手を否定したり評価しない考え方なので、相手に話しやすさを感じてもらえます。
認知症の人には事実とは異なるその人の世界観が存在していることがあります。それを否定してしまうと症状は酷くなり介護が大変になります。
肯定をするわけでもなく、その方の世界観に入って色々と教えてもらうようにすると穏やかな生活を送ってくれます。
ラポール
受容していることを、相手が認知することで、相手とのラポールを図ることを目指します。
まず、相手と信頼関係を作りたい、もっと理解したいというあなたの誠実な気持ちが大切になります。
そのことを具体的な行動で示したのが、傾聴です。傾聴とはあなたが聞きたいことを聞くのではなく、相手が言いたいことを聴いていく姿勢です。
傾聴の姿勢を示して、相手の思考や感情を教えてもらい、相手の気持ちに共感し、受容する。そして、それを相手に認めてもらう。この一連の流れがラポールです。
傾聴は、ただ単に話の聞き方ではなく、相手の世界を尊重し、共感し、大切な人だと思って接していく話の聴き方であり、人と向き合う基本的な姿勢そのものです。
まとめ
接遇マナーは最低限守らなければいけないルールであり、技術はコミュニケーションの質をより高いものにします。
実践してわかるのは言うは易し、行うは難しです。
ビデオを撮るなどして一度自分のコミュニケーション方法を客観的に見てみるのも良いかもしれません。
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