戦争が始まれば原因が何なのかメディアが論じますが、戦争がないときに戦争がない状況を論じることはほぼありません。
それと同じで特別な死因がない”老衰”が日本人に広く受け入れられていることを意味します。
これは世界で見ると日本人特有の現象だと指摘されています。
老衰が死因ランキングにあげられるのは日本ぐらい
厚生労働省の調査によると、2018年、老衰は脳血管疾患を抜いて死因の3位に浮上しました。2021年まで4年連続で1位はがん(悪性新生物)2位は心疾患、3位は老衰です。
老年学が専門で名古屋大学名誉教授である井口昭久氏は論考の中で、「『いろいろ病気はあるけれども、おばあちゃんだから老衰にしましょう』最近はこんな感じだ」と述べています。
WHOによる世界の死因TOP10 日本との比較
- 1位 虚血性心疾患
- 2位 脳卒中
- 3位 慢性閉塞性肺疾患
- 4位 下気道感染症
- 5位 新生児症状
- 6位 気管がん・気管支がん・肺がん
- 7位 アルツハイマー病やその他認知症
- 8位 下痢症
- 9位 糖尿病
- 10位 腎臓病
世界保健機関(WHO)によると、2019年の世界死因上位10位に、老衰という言葉はありません。さらに、老衰という言葉自体、最近になってようやく、国際疾病分類に加えられた状況です。
日本における死亡の判断基準
そもそも日本の医師が死亡を診断する目安としては、厚労省作成の「死亡診断書記入マニュアル」があります。
その中で「死亡としての『老衰』は高齢者でほかに記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ」とされています。
しかし「老衰死に明確な診断プロセスはない」ため、現場での判断に委ねられています。
現場では家族の心情に配慮することが最もとされており、日本では”老衰死は天寿を全うした”といった前向きな印象を、介護してきた家族に与える場合が多いからだともいえる。
また、体の機能がだんだんと弱り、ターミナルケアに向けた方針を相談する際には、病気の罹患の可能性があっても検査や加療が生活の質を下げると判断すれば、老衰とする場合があるとも言います。
ただ、入れ歯のかみ合わせを改善しただけで食欲が戻り、体力が回復する例もあり、老衰と判断するには、体の状態を丁寧に把握する必要があります。
一方で医学教育ではこのような老年学を学ぶ機会がほとんどないのが実情といわれています。
WHOは老衰死の判断基準を世界で統一すべき
埼玉県で在宅医療にかかわる今永光彦医師はこう訴えています。
老衰の診断についてある程度の標準化が必要だと考えている。死生観にも関わる複雑なテーマなので、医療関係者だけではなく、市民、マスコミなどいろいろな属性の人たちで、老衰死についての議論が必要だ。
若い世代が好んで話をするテーマではないので話題にはなりにくいとは思います。かといって高齢の方々も好んでするようなテーマではありません。しかし、若者と比較して自身に差し迫った逃れられない課題ですので、心のうちではある程度思考するようになるのではないでしょうか?
まとめ
今回の件は日本のガラパゴス化問題の一部でしたが、いかがでしょうか?
独立したガラパゴス化の特徴というのは、立つ視点によって良い部分悪い部分があるとは思いますが、2022年9月時点で高齢化率28,7%の日本人にとっては、とても興味深い話題だったと思います。
カラオケ・お寿司(生魚の食)・5Sなど、日本独自の考え方が世界の標準となった歴史があります。今後「老衰」もグローバルスタンダードとして認められる可能性があるかもしれませんね。